結婚相談所は初期費用として10万円かかり、成婚料金は30万円です。
また、プランによっては月会費も必要となります。
現在ではマッチングアプリという手軽な方法もありますが、なぜこのようなアナログな結婚相談所に高額な費用を支払う人がいるのでしょうか。
それは、結婚相談所には仲人が付いて婚活をサポートしてくれるため、自分ひとりで悩まずにいられるという点や、「この人と結婚しても間違いない!」という確信を持てるように背中を押してもらいたいという人が多いためです。
実際に結婚相談所では、どのように婚活が行われているのでしょうか。
ここでは、36歳の商社マンのAさんのケースを紹介します。
彼は20代の頃に失恋の経験をし、その影響をずっと引きずってきました。
新しい女性との交際でも、元カノと比べてしまいます。
そんな彼が結婚相談所を訪れた理由です。
Aさんは26歳の時に転職し、同期B子さんと付き合い始めました。B子さんは容姿も非常に魅力的で、華やかな顔立ちをしていました。彼女の美しい茶色のロングヘアと颯爽とした歩き方は、社内でも注目を集め、Aさんの周りには彼女に思いを寄せる男性が多くいました。
Aさん自身も転職して間もないにもかかわらず、営業成績が良く、社内のイベントでも積極的に活動しました。
あるイベントの幹事を2人で担当したことがきっかけで、AさんとB子さんは急接近し、やがて恋人同士となりました。
Aさんは交際が始まった当初は、常にB子さんとの約束を優先していました。しかし、次第に彼の日々は仕事を優先するようになりました。
Aさんは20代半ばで、部署内での営業成績がトップだったため、プレッシャーを感じていました。彼は「仕事を頑張れば2人のためになる」という信念を持っていました。職場には元カノとの思い出が残っていました。
一方、B子さんは交際開始当初から「30歳までに結婚したい」と口にしていました。
Aさんはそれまでにプロポーズをしようと考えていましたが、彼女が30歳の誕生日を迎える直前に、仙台への転勤要請がありました。
Aさんは仙台なら東京からもそんなに遠くないし、週末には会いに帰れるかもしれないと考え、プロポーズの予定を延期しました。
彼は単身で仙台に行き、転勤後の忙しい日々を過ごしていました。
しかし、2人の関係は終わりを迎えることになりました。
半年後、久々に上京してB子さんと会ったAさんは、突然別れを告げられました。
彼女はAさんの転勤後に知り合った別の男性と結婚することになったのです。
Aさんにとっては驚きでしたが、正直、自分にも思い当たる節があったのです。
彼は「30歳までに結婚」というB子さんの夢を叶えられなかったことを悔やんでいました。
転勤後は新しい職場での仕事に忙しく、連絡も少なくなっていたので、心の距離を埋めることができなかったまま、B子さんは去っていってしまいました。
それから7年の歳月が経ち、Aさんは東京本社に戻ってきました。しかし、職場のあちこちでB子さんの思い出を見つけては、落ち込む日々が続いていました。
Aさん
「自分は誰と付き合ってもうまくいかないし、元カノを超える女性とは出会えない」
という絶望感にさいなまれて、Aさんは仕事にも集中できなくなっていました。
そんな彼を見かねた同僚は合コンに誘ってくれたり、行きつけの定食店の主人がアルバイトの女性を紹介してくれたりしました。
もちろん、婚活アプリにも登録したのですが、Aさんは元カノとの比較が抜けず、なかなか新たな恋愛に進むことができませんでした。
仙台勤務の期間中には、数多くの女性とデートをしました。
その中でも、交際した女性は6人でしたが、彼はどの女性にも愛を抱くことができず、交際が3カ月以上続かなかったのです。中には3回デートするだけで別れてしまった人もいました。
Aさんは、関係がうまくいかずに自然消滅することもありました。
その理由は非常にシンプルです。
Aさんは、相手との将来も考えずに「次も会いたい」と思えなかったのです。
たとえ元カノと外見的特徴が似ている人と付き合っても、内面が同じとは限りません。
相手の自己中心的な行動が明らかになると、Aさんは面倒くささを感じ、別れを意識し始めるようになりました。
外見だけで相手を探そうとした結果、理想の相手にはなかなか出会えなかったのです。
長続きしない相手との関係で繰り返し別れてしまうことから、Aさんは元カノを神聖な存在としてしまう悪循環から抜け出せずにいました。
B子さんとの思い出がある東京本社に戻って初めて、Aさんはこの状況から脱したいという気持ちが芽生えました。
東京に帰ってから、Aさんは結婚相談所での活動を決意しました。
その決断を後押ししたのは、仲人が提供するアドバイスのシステムでした。
Aさんは、以前成婚した親戚の紹介で、結婚相談所の入会面談にやってきたのです。今まで頭の片隅にB子さんのことがあったため、似たような人ばかりと付き合ってきました。
美しい顔立ちでロングヘアの女性を選んでいました。しかし、まずは元カノの外見に固執することをやめることが、婚活の必要な条件でした。
「神聖化した元カノ」との関係を断ち切るためのシンプルな方法
Aさん自身が、このことを一番理解していました。
しかし、婚活は一人では難しいものです。仲人は、そんな人々をサポートするために、根気よくついていく存在なのです。私は、Aさんに、元カノの内面的な特徴をいくつか挙げてもらうことにしました。
B子さんに魅力を感じたのは何だったのか、2人で過ごして楽しかった瞬間は何だったのか。
対話を通じて、Aさんが元カノに抱いたポジティブな感情を一つひとつ浮かび上がらせていきました。
これが、「神聖化した元カノ」との悪循環を断ち切るためには効果的な方法なのです。
B子さんは、姉御肌で面倒見が良く(家族意識・思いやり・共進力)、新しい情報に敏感である(私は「アンテナ力」と呼んでいます)、彼氏に対しては素直さやかわいらしさを見せることがありました。
Aさんは、これらの特徴をいくつも挙げていきました。
そして、お相手候補のプロフィール写真から、アンテナ力が高い方を選出するために、お顔だけの情報ではなく、着こなしにも着目してもらい、気になる人を探してもらいました。
最初は苦戦していたAさんでしたが、続けるうちに、好意を抱く女性にはある共通点があることに気づいたようです。
それは、写真の笑顔が自然体で洋服の着こなしと合っていることです。
Aさんは仕事の内容や身長の高低や顔の造形など他の条件にはこだわりがありませんでした。
Aさん自身、7年間にわたって元カノの残像を追いかけ続けてきましたが、ここでようやく気が付いたのでしょう。
決して元カノの外見が好きだったのではなく、個性そのものを愛していたことを。
これは小さなことに思われるかもしれません。
一人ではなかなか気づけないし、言葉にする機会もないかもしれません。
しかし、これを拾い上げ、受け止めるのも仲人の大事な仕事です。
過去の悪い記憶を思い出すのではなく、元カノのどこが好きだったのかをいま一度分析し、自分が本当に結婚相手に何を求めているのかを理解していく必要があります。
整理することで、美化されすぎた残像が徐々に現実を帯びていくのです。Aさんの心が再び動き始めるまで時間はかかりませんでした。
こうして、タイプの異なる約10人の女性が候補者として挙がりました。その中で私はAさんに、C子さん(仮名、37歳)と会うことを勧めました。C子さんは芸能関係の仕事に就いている女性です。
Aさんは最初はなじみのない業界に戸惑いましたが、印象が良かったため、お見合いにつながりました。C子さんには、元カノに通ずるいくつかの共通点がありました。
元カノは3人きょうだいの長女で、敦士さんは特に彼女の面倒見の良さを評価していました。C子さんも同じく長女であり、家族や友人との時間を大切にするという彼女のコメントや、面倒見が良いと書かれた別の仲人のコメントに期待が持てたのです。
Aさんは以前に経験したことのないお相手選びのやり方に少し戸惑っていました。
C子さんのプロフィールに自分が大好きなサッカー観戦という趣味があることを見つけ、自信を持ち始め、お見合いに対して前向きな気持ちになったようです。
最初のお見合いは銀座のホテルのラウンジで行われました。
C子さんはベリーショートの髪型に特徴的な大きな瞳をしており、ビビッドなグリーンのワンピースを上手に着こなしていました。
Aさんは彼女の外見に好印象を持ちましたが、実際に話し始めてみると、C子さんの内面にも女性らしい一面がありました。
最初は彼女のギャップに戸惑ったAさんでしたが、30分も経つと彼女のペースに引き込まれていったそうです。1時間半ほどが経過した時、会計を済ませた敦士さんにC子さんはお礼を言い、頭を深々と下げながら「ごちそうさまでした。握手しましょう。また会いたいから」と手を差し出しました。
Aさんは彼女の手を握り返しました。彼はグリーンのワンピースが人ごみの中で消えていく様子を見ながら、元カノを思い出していました。
彼らはいつも別れ際に握手をし、ハグをしていたのです。
そんな過去の思い出がよみがえりました。
ただし、C子さんの手は元カノとは全く違う感触でしたが、小さながらもぬくもりのある手だったのです。AさんはC子さんと別れたばかりなのにも関わらず、「またすぐに会いたいな」と思うほど彼女に引かれていました。
彼は背中を押され、素晴らしい縁に結ばれることを感じていました。
C子さんの趣味はウインドーショッピングでしたので、2人のデートは街を散策することになりました。
最初はAさんは買い物に興味がなく、やや気乗りしなかったようです。
しかし、次第に2人で街を歩き回ることが楽しく感じられるようになっていったようです。
出会ってから2カ月ほど経った頃には、手をつないでショップ巡りをしたり、AさんがC子さんに似合う服を選んだりする関係に発展していきました。
仲人としては、C子さんとのデートの報告を受けていくうちに、彼らの関係に対する直感が働き始めました。
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本気の人のための結婚相談所☆ Bridalチューリップ ☆
仮交際期間の3カ月を待たずに、プロポーズをするべきだと感じたのです。
私がAさんにそのことを伝えると、彼は少し恥ずかしそうな表情を見せました。元カノとの失敗した思い出がよみがえったようです。
「もしプロポーズのタイミングを誤ったら、Aさんは嫌われるかもしれないし、プロポーズしても断られる可能性もある」というような不安や心配が、はっきりと伝わってきます。
そんなときには、仲人のチームワークが役に立つこともあります。まず、C子さんの仲人から現在のお気持ちを聞き出します。
お相手の仲人からは、「C子さんもAさんとの結婚を望んでいる」という情報が伝えられました。
お互いの意思が確認できた段階で、すぐにAさんさんとプロポーズの計画を相談します。
結婚相談所では、男性がプロポーズするという昔からの習慣があります。
Aさんは銀座のフレンチレストランを予約して、C子さんにプロポーズしました。緊張したAさんの言葉にC子さんは耳を傾けながら、そっと手を握ってくれたというエピソードもありました。
実際に、自分で結婚相手を決めることができない人は多いです。
Aさんのように、数年間婚活に悩んでいたけれども、「元カノ現象」が数カ月で解消し、すぐに運命の相手と交際し、5カ月後には成婚するというケースも珍しくありません。
このような事例は、結婚相談所ではよくある話です。
昔から、結婚はタイミングと勢いが重要だと言われています。
結婚したいと思い始めた時が適切な結婚時期であり、その時に自分のそばに誰がいるかで、結婚相手が決まってくるのです。
ただし、このような自分で決断することができる人は、実際には少数派です。
今のアプリの時代でも、人間の性格や思考はあまり変わりません。
むしろ、選択肢が増えることで、婚活においての悩みは深刻化していると思います。
だからこそ、結婚相談所や仲人のようなアナログな存在が必要とされているのでしょう。
自分で決断することができない人たちにとって、結婚相談所の存在は大きな後押しになります。うまくいかなかった恋愛の先にも、まだ可能性が潜んでいるのです。